コラム Column

笑顔と感謝の浅田真央アイスショー。アンコールの白ドレスに込めた思い。

文:松原隆臣
Takaomi Matsubara

終始、晴れやかだった。

8月4日、浅田真央が座長を務めるアイスショー「THE ICE」の名古屋公演初日が愛知県体育館で行なわれた。毎年開催されてきた恒例のアイスショーで、今年は大阪公演に続いての公演だ。4月の引退発表後、地元のファンの前で初めて滑る場でもあった。

開演時刻は13時、その2時間近く前にはすでに多くの人々が会場につめかけていた。場外のグッズ売り場には長い列が続いている。

開場は12時を少し過ぎた頃。炎天のもとで扉が開くのを列を作って待つという酷な状況にあった。出演者の1人である小塚崇彦が「(当日の開演前の)練習のときは33度」と明かしたように、始まる前から会場にも熱がこもり、扇子などで仰ぐ観客の姿が目立った。

それでもショーが終わり、会場を出る人たちは、笑顔で帰途へついた。

「気持ちもちょっと柔らかい感じで滑れたかな」

何よりも、浅田自身が、始まりから終わりまで、笑顔だった。終演後も柔和な表情を浮かべていた。

「大阪公演が終わって、1回お家に帰りました。エアロと会ったりして、『あ、地元に帰ってきたんだなあ』と思いながら昨日ここに来ました。リンクに乗ったらどの会場も一緒なんですけど、今日はお友達や家族も見に来てくれたので、気持ちもちょっと柔らかい感じで滑れたかなという風に思います」

幼少期からの写真が順々にスライドショーのように映し出されて始まった第1部で白眉だったのは、出演者たちが浅田真央のこれまでのプログラムを演じるメドレーだった。

そのメドレーでは、アデリナ・ソトニコワが『シェヘラザード』、織田信成は『スマイル』、宇野昌磨と鈴木明子それぞれが『ラヴェンダーの咲く庭で』を披露した。

バトル、小塚、高橋……様々な趣向が凝らされた。

バンクーバー五輪のフリーであった『鐘』では、まずジェフリー・バトルが滑り、小塚が引き継ぐ。小塚が浅田の振り付けを、ステップワークからフィニッシュのポーズまで完全にコピーしてみせると、歓声が沸いた。ソチ五輪のフリー 『ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」』を滑ったのは高橋大輔。『リチュアルダンス』の冒頭では、その高橋と浅田のコラボレーションが観られ、やはり歓声に包まれた。

それぞれ受賞者第1号となる愛知県県民栄誉賞と名古屋市特別スポーツ功労賞の授与式を挟み、第2部では、先の出演者や無良崇人、長洲未来らがソロナンバーを披露する。長洲はトリプルアクセルにも挑んだ。

出演者とともに、最初から最後まで晴れやかだった。

浅田も『ラフマニノフ「エレジー〜スイートメランコリー〜」』、アンコールとして『Wind Beneath My Wings』と2つの新プログラムを披露した。その都度、スタンディングオベーションで称えられた。そしてアンコールのときには白の衣装を身にまとった。遠目に見た限りでは、2010-2011シーズンのエキシビションで着用していたのと同じではなかったか。

「今年のTHE ICEは、私の今まで思い出に残っているプログラムだったり、また自分のソロナンバーは、今までの思いだったり感謝の思いだったりを皆さんに伝えたいという思いで滑っています」

衣装にも、その言葉通りの思いが表れているように思えた。

この日、浅田はどこまでも晴れやかだった。出演者たちに称えられ、あるいは出演者たちを称え、最後まで楽しそうに、笑顔を浮かべていた。競技生活の中では、ときに苦しそうな表情を浮かべることも、うつむくときもあった。それらと比べるならば、醸し出す雰囲気は異なる。

「またスケートとともに、歩んでいけたらなと」

変わらなかったのは、滑りそのものにあるたしかな技術と、人を惹きつける力だ。ステップにも、つなぎにも、それらがうかがえた。5歳からスケートに打ち込んできて、長年にわたり培い、ときに試行錯誤しながら成長を遂げてきた時間がそこにあった。

今までの思い、感謝の思いを伝えたいという意志とともに構成し、滑った今回のTHE ICE。それは引退会見とともに、競技人生に区切りをつける機会という意味合いも持っている。

浅田は言う。

「やっぱり私は5歳からスケートを始めて、ずっと今までスケートとともに成長してきました。これからも、THE ICEが終わっても、スケートから離れることはないと思います。ただそれがどういう形であるかは自分にはまだ分からないので、これからもう一度じっくり考えて、またスケートとともに、歩んでいけたらなと思います」

変わることのない魅力をあらためて観る人々に伝えた浅田は、やはり変わることがないであろうスケートへの思いとともに、ここから、スケーターとしての新しいスタートを切ることになる。

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