コラム Column

ネイマール売却290億円が無駄金に?バルサフロント、強化戦略が迷走中。

文:工藤拓
Taku Kudo

「ネイマールはもう過去。移籍を望んだのは彼であり、もっと早くにその意思を明らかにできたはずだ。コレクトな去り方ではなかった」

8月7日、ジョアン・ガンペール杯に先立って行われたペーニャ総会(サポータークラブの総会)の壇上にて、バルセロナのジョゼップ・マリア・バルトメウ会長はパリ・サンジェルマンへ移籍したネイマールに対する恨み節を口にしていた。

ネイマール去りしバルサの初陣となったこの日、カンプノウのスタンドからは「お前なんか嫌いだ、ネイマール、ムエレテ(死ね)!」なんてチャントも聞かれた。

移籍決定から4日。まだクラック喪失のショックが生々しく残っていただけに、仕方のないことではある。とはいえ、いつまでも去った人間のことを考えていても仕方ない。バルトメウの言う通り、もうネイマールは過去でしかないのだ。

今こそ“MSN頼み”脱却のチャンスとも言えるが……。

もちろん、ネイマールの抜けた穴を埋めるのは簡単なことではない。だが見方を変えればプラスに考えることもできる。

過去3シーズン、バルサは良くも悪くもメッシ、スアレス、ネイマールの南米トリオを中心としたサッカーに徹してきた。ルイス・エンリケは彼ら3人の破壊力、得点力を最大限に引き出すためのシステムを考え、メンバーを組んできた。その結果、グアルディオラ&ビラノバ時代のポゼッション至上主義は影を潜め、より縦に速く攻めるスタイルに傾倒してきたのは自然な流れだった。

だがその傍ら、前の3人が不動であるためにシステムや人選の選択肢が限られ、守備面で中盤以下の選手に大きな負担がかかるという構造的問題がつきまとっていたことも事実だ。その点、アンタッチャブルな選手が1人減った今季は采配の幅が広がったと言える。

問題はその広がった幅の中で、何を重視して方向性を打ち出すかである。

コウチーニョ以外の補強候補は首を傾げたくなる。

その意味ではネイマールの売却で手にした2億2200万ユーロ(約290億円)の使い道が重要になってくるのだが、クラブの動きからはいまいち何がしたいのか見えてこない。

ネイマールの代役として狙っているフィリペ・コウチーニョはまだいい。スピードや突破力、得点力ではネイマールに劣るものの、テクニックや周囲との連動性が高い彼は、アタッキングサードにおける崩しの場面に必要な意外性をプラスしてくれることが期待できる。

しかし、それ以外に挙がっている補強候補は、首を傾げたくなる選手ばかりだ。

例えばウスマン・デンベレは、足は速いがテクニックも得点力もネイマールとは比較にならない。そんな選手の獲得に、ネイマールの獲得費用を上回る1億ユーロ超のコストをかけるなんて馬鹿げている。

既に獲得が決まってしまったパウリーニョもしかりだ。ヨーロッパでたいした実績を残さぬまま29歳を迎えた選手に、クラブ史上4番目に高い移籍金4000万ユーロを払う価値が本当にあっただろうか。ちなみにバルサが払った移籍金のベスト3は1位:ネイマール、2位:スアレス、3位:イブラヒモビッチである。

セルジ・ロベルトを手放しては何の意味もない。

そもそも快速ドリブラーならデウロフェウ、フィジカルや機動力、得点力に優れたインサイドハーフならセルジ・ロベルトが既にいるではないか。

買い戻しが決まる前からチームに残るかどうかが疑問視されていたデウロフェウはまだしも、昨季に複数ポジションで優れたパフォーマンスを見せたセルジの元にはマンチェスター・ユナイテッド、チェルシーなど複数のビッグクラブからオファーが届いている。

右SBを補強した今季は本職の中盤でプレーする機会が増えると期待していた矢先、クラブは彼と特徴がかぶるパウリーニョを獲得した。ここまでプレシーズン中の扱いもラキティッチ、イニエスタの控えにとどまっていることで、セルジは移籍を真剣に検討し始めたという。

ベッラッティ獲得が難しいと見るや、フィジカル系に。

セルジの違約金は4000万ユーロ。つまり、バルサの意思に反して引き抜かれた場合でも、パウリーニョの移籍金と同額の金しか懐には残らない。いったいフロントはこのことについてどこまで危機感を抱いているのだろうか。

そうでなくともバルサの中盤は人員過多が問題となっている。それでも敢えて補強するのならば突出したレベルの即戦力を獲るべきであり、ネイマールを取られた時と同じ方法でパリ・サンジェルマンからベッラッティを引き抜くくらいのことをするべきだ。

バルサの中盤に本当に必要なピースは、シャビの退団以降不在のままとなっているオーガナイザーだったはずだ。だからこそクラブはベッラッティの獲得を今夏の最優先事項としていたのではなかったのか。

ベッラッティは失われつつある中盤の支配力を取り戻すためのキーマンだった。それが彼の獲得が難しいと見るや、とりあえず今季も昨季のスタイルを継続しようとフィジカル系選手の補強に転換したのだとしたら、方向性などあったものではない。

劣化版ネイマールを何人も補ったところで……。

それに近年のバルサがトランジションの展開で高い得点力を発揮してきたのは、無尽蔵のスタミナを誇るネイマールが90分間を通して長距離のスプリントを繰り返していたからだった。そのネイマールを失い、彼の劣化版と呼べるような選手を補ったところで、同レベルの攻撃力を保つことは難しいだろう。

バルサは昨夏、主力組の立場を脅かすほどのレベルにはないバックアッパーを何人も補強した。その結果、センターバックの定位置を掴んだウムティティを除く多くの新戦力がろくに出場機会を得られぬまま、戦力として計算できない余剰人員となっている。

夏のマーケット終了まであと2週間。もしフロントが同じ過ちを繰り返し、ネイマールの売却で得た貴重な資金を無駄にするようなことがあれば、いよいよソシオたちは黙っていないだろう。

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