コラム Column

なぜ日本はクライミング強豪国に?500軒に迫るジムと、その工夫とは。

文:松原孝臣
Takaomi Matsubara

あらためて、日本が強豪国であることを示したシーズンだった。

スポーツクライミング3種目のうちの1つ、ボルダリングは8月にワールドカップの第7戦がミュンヘンで行なわれ、先シーズンのワールドカップは終了。日本は国別ランキングで、4年連続1位に輝いた。

このランキングは各大会ごとの、各国上位3人の選手のポイントを合計して順位付けるものだ。日本は2118ポイント、2位のイギリスは929ポイントだから、圧倒的な強さを誇ったことが数字に表れている。ランキングは男女の成績を合わせた数字だから、男女ともに好成績であったことも示している。

また9月10日に終了した世界ユース選手権では、全種目を合わせて金メダル8個を含め計24個のメダルを獲得。国別のメダル総数で1位となった。2位のアメリカが金メダル5個を含む計14個だから、日本の強さをあらためて見せつけた大会となった。

いまや500軒に迫るボルダリングジム。

こうした好成績の核となっているのが、ボルダリングでの強さだ。

ではなぜ、日本のボルダリングは強くなったのか。

かねてから言われてきたのは、日本の選手の体型が向いているということだが、ここでは別の側面から見たい。

大きな要因は、ボルダリングに取り組むことができるジムの増加だ。

2000年頃には全国で数十軒であったのが、2000年代後半に100軒を超えた。その後も増え続け、今日では500軒に迫ると言われている。

かつては国際大会に出場するクラスであっても、練習場所を求めて苦労する選手もいたし、始めてみたいと思っても近隣にないことから、やってみること自体が「遠征」になったりあきらめてしまう人もいて、普及という点でも環境が整っていたとは言いがたかった。

日本のジムは、登るための突起物が多い?

その中にあっても、クライミングにとことん打ち込み、ジムを開くことでトレーニングの場を作りたい、魅力を広めたいという熱心なクライマーたちがいた。趣味として始めてみて、その魅力にはまってジムの経営に乗り出した人々もいて、ジムは急速に増えていった。

ジムが増えるにつれ、始めてみる子供たちも増加。そこでレッスンを受けながら成長する若い世代も次々に現れた。

また、ジムの特徴も、選手の育成につながっている。海外に比べると、日本のジムは壁一面にびっしりとホールドが付けられているところが多い。ホールドとは、登るために指や足をかける突起物だが、色とりどりのホールドが無数と言っていいほど並んでいる傾向がある。

ジムのサイズ問題を解決した創意工夫。

それだけたくさん取り付けているのは、少ない壁面で様々な課題をすぐに設定できるようにするための工夫だという。

初心者からすると、ぱっと見たとき、どのホールドから登っていけばいいのか複雑きわまりないが、その仕様によって多数の課題にすぐに取り組める、適応する力をつけることができるという特徴がある。敷地の都合から、ジムのスペースが大きく取りにくいことで生まれた特色だろう。スペースの点は、設置する壁の高さをより求められ、サポートする人の必要なリードよりボルダリングが盛んとなった理由でもある。

さらに、野口啓代らがそうであるように、自宅に壁を設置し練習に励む選手たちもいた。こうした草の根での取り組み、下からの押上が日本の強さとなっている。広がりを見せる中で、選手個々に対して支援するスポンサーの存在が出てきたことも、成績の向上へと寄与してきた。

全体のレベルは上がったが、優勝回数は減少。

ただ、課題も浮上してきている。

国別ランキングではトップに立ち、個人のワールドカップ総合順位トップ10でも、日本の選手は男子が5名、女子は3名が名を連ねた。前のシーズンはそれぞれ2名だったから、選手層の厚みが増したことを物語っている一方で、前のシーズンより男女ともに優勝回数は減っている。男子は4度から2度へ、女子は2度からゼロになったのだ。

全国各地での粘り強い取り組みがあって、普及していき、その中で選手が育てられてきたが、世界のトップを争っていくために上位にいる選手たちの強化にいかに取り組んでいくかはまた別の話だ。

強豪国と認められるまでになった今、それは2020年の東京五輪へ向けての課題でもある。

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