コラム Column

なぜ明治大学は箱根を失ったのか。「反撃のシナリオ」なき予選落ち。

文:生島淳
Takahito Ando

箱根駅伝予選会。

15kmを過ぎて明治に「黄信号」がともった。

明治は15kmの通過点で10位。11位の東京国際大との差は1分11秒あったが、17.5kmの地点では、その差が2秒にまで縮まっていた。

経験上、これは完全に逆転されるパターンだ。前半抑え、後半に追い上げてくるチームは、一気にタイム差を縮め、上位のチームを抜き去る。

レースが終わり、当落線上の学校にとって、発表までの時間は長い。明治の選手たちを取り囲む人の輪には、不安が広がっているように感じられた。あまり、言葉が発せられない。

1位の帝京大から始まった結果発表だったが、8位の発表時に雨脚が強まった。

9位は上武大学。そして10位は——東京国際大だった。

11位に日大。12位は創価大。その頃になると、明大関係者の沈黙はより重たくなった。当落線上に絡むことも出来なかったのか——。その現実に、みんなが呆然としているように見えた。

これほどの「不幸の連鎖」は珍しい。

明治は、東京国際大と2分31秒差の13位だった。

近年の予選会でこれほど「不幸の連鎖」に見舞われた大学は珍しい。

エースの坂口裕之(3年)が前日から「頭がくらくらする」と訴え、レース当日になっても状態は上向かずに欠場。そしてレースが始まると、坂口に次ぐ走力を持つ三輪軌道(2年)が給水所でのアクシデントに見舞われ、途中棄権してしまう。

西弘美監督は「飛車角が抜けてしまった」と嘆いた。

実際、このふたりが抜けた影響は、タイム差にして「5分」にも及ぶと見られる。

いつもは淡々としている西監督だが、この日ばかりは想定外の出来事に戸惑いを隠せなかった。

「飛車角」と呼んだ2人がいれば……。

「今朝の時点まで、悪くても3番、もしくはトップ通過を狙っていく感じでした。想定として坂口は59分20秒から30秒、三輪も60分台で走る算段でした」

飛車角が抜けた穴は、どれほど大きかったのか。予選会で明治の9位、10位の選手のタイムは1時間2分18秒と1時間2分29秒である。

仮に坂口が59分30秒、三輪が60分59秒で走ったとすると、9位、10位の選手と入れ替わって「4分18秒」を稼げることになる。つまり、トータルは10時間8分47秒。これは城西大を上回り、8位で予選を通過できたタイムだ。

ふたりが揃って走れていれば、明治は無事に本戦に駒を進めていたに違いない。

「僕たち4年生がスタートラインに立てていないことが」

重く沈んだ報告会では、今回の登録メンバーに名を連ねることが出来なかった4年生の末次慶太主将が挨拶をしていた。

「後輩たちは持てる力を最大限出してくれましたが、三輪の途中棄権だったり、坂口の欠場だったり、そういったマイナスの面もありましたが、何より僕たち4年生が予選会のスタートラインに立てていないということが、最大の敗因だと思っています。予選会はあくまで通過点とチームの中に慢心もあって、このような結果にもなって、応援してくれたみなさんに本当に申し訳ないです」

時々、唇を噛み締め、必死で涙をこらえながら、言葉をつないでいた。

「僕たち4年生の箱根への道は断たれましたが、まだまだ後輩たちには箱根を走るチャンスはありますので、しっかり僕たちも来年度へつなげていきたいと思います」

たしかに4年生の不在は痛かった。20kmは長丁場。経験のある4年生が多ければ多いほど、安定感は増す。箱根の経験者である末次の欠場もまた、明治にとっては痛手だった。

この日の明治からは「反撃のシナリオ」が見えず。

心配になったのは、次のターゲットへ向けての覇気が報告会からは感じられなかったことだ。気持ちは分かる。落選など、想定していなかったのだから。

西監督も円陣を解散するにあたっては、あっさりしていた。

では、昼食をとって、4時に集合しましょう。解散」

当日の4時からは練習が予定されていた。この後、グラウンドに集合した選手たちはフリージョグの練習を行った。

残念ながら、この日の明治からは「反撃のシナリオ」が見えてこなかった。

比較するのは本意ではないが、昨年の予選会で落選した中大の1年生主将・舟津彰馬の涙からは、絶対に中大は帰ってくるという確信を得ることが出来た。予選会通過が危ぶまれていた分、危機感があったのだろう。反撃に向けてのシナリオが、あの場から始まっていた。

明治は予期していなかった落選という事態に誰もが戸惑い、視線を落としていた。

それでも、誰かひとりでもいいから、「前へ」と視線を向けて欲しかった。悔しさからの力を、誰かから感じたかった。

誰か、「M」の未来を感じさせる走りを見せてくれ。

この後、明治は11月5日の全日本大学駅伝に出場する。箱根が後に控えていない全日本を走るのはモチベーションの維持が難しい。

しかし、ここが重要だ。明治にとって、これまでの全日本以上に大きな意味を持つことになるだろう。どんな結果を残せるかによって、将来に向けてのシナリオが変わってくるからだ。

全日本では、末次主将も登録メンバーに入っている。

「しっかり僕たちも来年度へつなげていきたいと思います」

という報告会の言葉を、その走りで実現して欲しい。

明治にとって今季最後となる駅伝。

誰か、「M」の未来を感じさせる走りを見せてくれ。

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