コラム Column

世界レベルで通用した00ジャパン。最強イングランド相手にPK戦で散る!

文:安藤隆人
Takahito Ando

“若い選手は戦いの中で成長する”

U-17W杯ラウンド16。グループEを1勝1敗1分けの2位で通過した“00ジャパン”は、グループFを3戦全勝、1位通過していたイングランドと激突。この一戦は、まさにこの格言が実証されたゲームとなった。

前半は、いつやられてもおかしくない展開だった。

オープニングシュートこそ日本が放っているが、それ以降ボールが日本陣内を出ることはほとんどなかった。

立ち上がりから、イングランドはDFラインでゆっくりパスを繋ぎながら日本が食いついてきた瞬間を狙ってロングボールを入れてきて、日本のDFラインを上下に揺さぶっていた。

そうしておいて、少しでも日本のDFラインが下がると見ると、一気に攻撃のギアを上げて才能溢れるアタッカー陣がアタッキングサードになだれ込んでくる。

実際、危ないシーンは何度もあった。

14分、MF平川怜のミスをかっさらったMFアンヘル・ゴメスがドリブルで仕掛け、FWリアン・ブリュースターにラストパス。ブリュースターのドリブルシュートはCB菅原由勢が身体を投げ出してブロックしてピンチをしのいだ。

24分にはMF福岡慎平のパスミスをボランチのジョージ・マクイクランがかっさらって一気に仕掛ける。DFがブロックすることはしたが、そのこぼれたボールから再びブリュースターに決定的なシーンを作られている。

26分には右からMFフィル・フォデンに突破され、折り返しから再びブリュースターの強烈なシュート(右ポストを直撃)。

28分にも右からフォーデンにシュートを浴びるも、CB小林友希が身体を張ってブロックした。

イングランドの凄まじい攻撃力の前に日本は完全に飲み込まれてしまい、ミスを連発していたように見えた。

「最後の最後で身体を張れる選手になれ」

ただ完全に押し込まれる中でも、日本は必ずシュートコースには身体を入れて、ゴールを割らせることは無かった。

この粘り腰はまさに、森山佳郎監督が2年半の歳月をかけて、チームに「最後の最後で身体を張れる選手になれ」と言い続けてきたメンタリティーの賜物でもあった。

そしてもっと重要なことは、「あれだけ押し込まれたにもかかわらず、前半ノーチャンスではなかった」ということである。

久保、上月らのプレーが試合の流れを変えた。

仲間がミスを連発する中、FW久保建英は冷静にポジションを取って、一旦ボールを受けると簡単には失わず、アタッキングサードにまで運んでみせた。

さらに左MFの上月壮一郎も、積極果敢なドリブルを見せ、何度となくゴールに迫っていた。

この2人の素晴らしい動きにより、イングランドも長い距離をスプリントする機会が徐々に増えていった。圧倒的な攻撃力を背景に日本の体力を奪うはずが、じわじわと自分達の体力が奪われる展開に変わっていたのである。

実際、37分には右サイドを平川が破り、そこから中村敬斗が強引だがシュートまで持っていってみせている。DFに当たってファーに流れたボールを上月が狙ったが、これは惜しくもサイドネットを揺らすにとどまった。

序盤は圧倒的に見えたイングランドだったが……日本の素早い仕掛けとサイドを活かした揺さぶりに対して、徐々にその脆さを露呈し始めていた。

試合途中、徐々に回復・反撃し始めた00ジャパン。

こうした小さくも良質なプレーの数々が、ミスの多かった他の選手達を徐々に奮い立たせていった。

例えば、らしくないミスが続いていた平川と福岡のダブルボランチ。この2人は、時間が経つにつれて徐々に効果的なプレーを見せるようになっていた。

おそらく……序盤こそやられっぱなしのように見えたが、ピッチ上で徐々に、実は自分達にも十分チャンスがあると肌で感じ始めていたのではないかと思う。

もともと平川と福岡は、足下の技術やパスセンスはもちろんのこと、試合のあらゆる流れにおいて洞察力・分析力に優れた選手たちだった。相手チームの状況を試合中に正確に把握して、すぐさま自分たちのプレーに落とし込んでいくのが得意な選手なのである。

そんな彼らでさえ、W杯という独特の雰囲気と、相手が優勝候補のイングランドということもあって、少し飲まれてしまっていたようだ。

ただ、並の選手ではそのまま飲み込まれっぱなしで終わってしまうが……彼らは違った。

試合終盤は、完全に日本ペースだった。

0−0のまま後半に入ると、前半の戸惑いが嘘のように、この2人を中心に日本の攻守が噛み合い出した。

61分、久保の単騎突破からのシュートを皮切りに、69分には交代出場したドリブラーのMF椿直起からのパスを福岡が繋いで久保が再びシュート。76分には、FW宮代大聖のシュートもあったがGKのファインセーブに阻まれる——。

この時間帯はイングランドのDFラインがズルズルと下がり、足が止まり始めて、ミスが出始めていた。まさに、前半とは真逆の展開になっていたのである。

とはいえイングランドも、途中出場のMFナイア・カービーを軸にたびたびカウンターを仕掛けては日本ゴールに迫っていた。だが平川と福岡が鋭い出足の守備を見せ、中盤を引き締め続けたことで、日本のゴールも割らせることはなかった。

85分を過ぎる頃になると……試合は完全に日本ペースになっていた。

87分の宮代のシュート、89分の久保のシュートはいずれも相手DFに防がれたが、得点してもおかしくない時間帯が続いていたように思う。

監督の言葉に滲んだ「世界でも通用した」感触。

結局、最後までスコアが動かないまま、試合はPK戦へともつれ込んだ(※今大会のレギュレーションで延長無しの即PK)。

死闘を演じ、90分を通して立場を一変させる戦いを見せた00ジャパンの選手達。だが、PK戦は日本にとって残酷な結末となった。

全員のPK成功で迎えた後攻の日本の3人目のキッカーはMF喜田陽。前半こそ守備に奔走していたが、後半には積極果敢なオーバーラップをするなど、攻守に大きな存在感を見せた選手だった。だがその活躍虚しく、喜田のキックはGKにストップされてしまった。

00ジャパンの世界での戦いは、ラウンド16で幕を閉じたのだ。

「必ずこっちのペースになる。必ずチャンスが来ると思っていた。本当に悔しいです」

試合後、森山監督はインタビューでこう答えていた。立ち上がりが劣勢でも、それを着実に跳ね返していき自分達のペースに持ち込めるはず……そんな素晴らしいチームに仕上げてきた自信がこの言葉の裏にあった。

世界でも通用する実力があると実感できた……そんな思いがあったからこそ、こういう緊迫した世界トップレベルの試合をもう少し経験させてあげたかった。

00ジャパンは凄まじい成長を遂げていただけに……。

今大会、1−2で敗れたフランス戦、そしてこのイングランド戦こそが「真の世界レベル」の、まさに命懸けの試合だったのだ。この2試合を通じての経験値は、日本の選手たちにとって計り知れないほど大きなものになったはずである。

フランス戦で学んだことは、すぐさま彼らの血肉となり、イングランド戦の善戦につながっていた。もしここを突破していれば……今度はイングランド戦で学んだことを実戦で披露し、さらに高い次元のサッカーで試合経験を積むことができたはずだ。

彼らは試合を通じて凄まじい成長を遂げていただけに、ここで終わってしまうのは本当に残念でならない。

この経験を活かすも殺すも、明日からの日常生活次第。

かくして彼らの初めての“世界トップレベルでのガチンコの戦い”は幕を閉じた。

だが、重要なのは実はこれからなのだ。

ここからフランスやイングランドの同世代の選手達は、母国リーグや国外の世界トップレベルのプロリーグで、より質の高い経験を積み重ねながら一気に成長速度を上げていく。

果たしてそのスピードに、日本の選手達がどこまでついていけるのか?

平凡にも感じるだろう日常生活、そしてサッカー選手として身を置くプレー環境など……この試合のことを忘れ、少しでも油断した日々を送っていると、イングランドやフランスの同世代の選手達との差は、簡単に、大きく、一気に広がってしまうのだ。

この大会に出た選手達にとって、このU-17W杯での経験が本当に人生における大事な財産になるかどうかは——今この瞬間ではなく、明日から待ち受ける日常生活で決まってくるのだ。

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